提灯探訪ブログ

提灯や祭りについていろいろなんでも話しています。

[提灯レポート]2013/04/11

浅草訪問

先日、数年ぶりに東京の浅草寺を訪ねてきました。


浅草寺には正面の「雷門」から仲見世を通って宝蔵門の「小舟町」、そして本堂の「志ん橋」と三つの大提灯が掲げられており、いずれも弊社が製造を担っています。
今回の訪問の目的は、その中の「雷門」「小舟町」の補修作業でした。

以前、このブログにあげていますが一昨年の12月にも「小舟町」の修理は行っています。しかし前回の新調から10年も経っていると気象条件やお祭りの際の揚げ降ろしによって随分と劣化が進んでしまいました。

概ねの痛みは、処々の和紙が破れているという状態でした。そういった弱っている箇所の骨の補強をし、破れた部分に紙を貼り直し、表面を綺麗に整えた上から、文字や色を付けて仕上げるのが修復の概要です。
ただこの作業が、想像以上に大変なものでした。
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何しろ3メートルを越える大提灯が吊るされたままの状態での作業になる為、仮設の足場を組んだ上での高所作業だからです。
最も高いところでは、地上4メートルにも及び、私自身、高所恐怖症ではないのですが、揺れる不安定な足場と、提灯自体も風で揺れることも相俟って、時折平衡感覚が無くなり、地面に落ちていくような錯覚にとらわれるのです。

特に「小舟町」の提灯は百名を越える奉納者の名前が記されており、細かな修復の際にはこの感覚が顕著に感じられ、冷や汗が止まりませんでした。

ともあれ、ぎりぎりではありましたが当初の予定通り5日間で作業を終えることが出来ました。
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仕上がりは、勿論「新品同様」とまではいえませんが現時点で可能な限りの「最良状態」までには補修できたと思います。
次回の新調の時期は未定ですが、それまで現状が維持できればいいのですが・・・。

通常、京都の工場内で製造作業をしていると、実際にはお客様と接する機会は少なく、自分達の作った提灯が本当に喜ばれているのか実感が湧き難いものです。
たまに、お祭りなどで吊られているのを拝見することがあっても、風景に溶け込んでしまえば、わざわざそれを見上げてくださる人もあまり見掛けません。

この仕事に就いて、幾度と浅草を訪れていますが、何時きても大勢の参拝のお客達でにぎわっていて本当に花やかです。
特に今回は桜の開花時期とも重なり平日にもかかわらず、各段に多かったように感じられました。

そして、その多くの方々が提灯の大きさに感嘆の声を上げ、一様に提灯を背景に記念写真をされているのです。

そういった方々を眺めていると、折角の思い出の一場面を私達の作業によって邪魔してしまい、本当に申し訳なくなる思いでした。 と同時にこれほど皆さんに愛され、この地のシンボルとなるような提灯に携わる仕事に就けていることを誇りに感じることができ、浅草を訪れるたびに再認識させていただけるのでした。

後日TVニュースで関東地方が爆弾低気圧の影響で台風並みの風雨に遭っている映像を見ました。
つい先日の修復作業を終えたばかりの提灯達が無事であることを祈るばかりです。(-m-)"

製作部H