「提灯屋さん」責任編集。大提灯、祭り提灯製造と紹介。
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[提灯豆知識]2011/12/24
童謡「おさるのかごや」の歌詞のなかに「小田原提灯」なるものが、でてきます。
♪えっさえっさ えっさほいさっさ
お猿のかごやだ ほいさっさ
日暮れの山道 細い道
小田原提灯 ぶらさげて
ソレ やっとこどっこいほいさっさ
ほーいほいほい ほいさっさ
私がおそらくこの童謡を初めて聞いたのは、幼稚園の頃だったと思いますが、私の幼少期には当然、「駕籠屋(かごや)」はこの世の中に存在せず、この曲を聴くたびに、おサルが何かしらの提灯を手に持って、猛スピードで夕暮れの山道を走り去るような勝手な想像をしていました。
そもそも、このおサルの持っている、小田原提灯(おだわらちょうちん)とは、東海道の宿場町であった小田原で、旅人が携帯するのに便利なようにと、同地在住の職人・甚左衛門が、畳んだ時に胴の部分が蓋に収まるように作ったのが最初といわれています。
この職人甚左衛門が考え出した小田原提灯には、「三徳」と呼ばれる三つの特徴がありました。
【一つ目】提灯の上下の蓋の部分に、大雄山最乗寺の霊木(杉)を使っているので、その霊力によって妖怪に会わない。魔除けの効果あり。
【二つ目】折りたたむと懐中(かいちゅう:ふところの中です)に入るので携帯に便利
【三つ目】胴の蛇腹部分の竹ひごが四角形に削られているので糊付け面が多く、雨や霧ではがれにくい
険しい箱根の山越えに最適なように工夫された小田原提灯ですが、一般の旅道中にも便利ということでとても、人気があり同じ形状のものが多く使われるようになりました。二つ目と三つ目の特徴は、今の小田原提灯にもあてはまることがあるとは思いますが、一つ目の「妖怪変化に会わない」という効果は「ホントに?」という感じはあります。
しかし、夕闇がせまる山道を歩いている際に、明かりの灯った提灯を持てば、それだけで、闇に対する不安な気持ちが和らいだのかも知れませんね。
現在でも、比叡山延暦寺の「千日回峰行(せんにちかいほうぎょう)」という荒行の中で、山道を何日も歩かれる際に、僧侶が懐にこの提灯を携行され、御使用になっています。
上下の枠は、木製のものだけでなく、銅製でできたものもあります。
以前、フランスの観光客の方が、パリのクリニャンクール(骨董市)でこの銅製の枠のみを買われて(紙部分は破損が激しく廃棄されたようです)、来日の際に私どもの店へ中の紙部分(火袋)の製作を依頼されたこともございました。
現代の日本のお宅で、この提灯をお持ちのところは少ないと思いますが、海を渡ってパリでアンティークとして保存されていたことに、不思議に感じたことを覚えています。
私たち日本人も、古いものを大切に使い、伝えていかなければならないなと思いました。
「 おさるのかごや」の童謡を聞くときは、おサルだけでなく、小田原提灯のことも思い出して聞いてくださいね。